〈審査委員の評価〉
高齢化が進む社会において介護現場に一石を投じた排泄センサーHelppad 1の後継。被介護者にとって排泄は自尊心に直結する深刻な課題であり、介護職の方々にとってももっとも解決したい問題の一つと言え、そこにしっかりと踏み込んだ勇気のあるプロダクトである。Helppad2では、吸引チューブをなくしセンサーとマットのみに見せることに成功。マット幅を小さくし、優しいカラーリングになった事は被介護者の安心につながっている。数多くのテクノロジーをベースに実装、検証が繰り返され、見えない部分でも大幅な改良点が成されていることが理解できる。プロダクトを考察すればするほど介護現場の切実さが伝わり、開発関係者に大いなる尊敬の念を抱かずにはいられない。介護現場での人員不足に直結する問題解決として、今後もさらなる発展を遂げてほしいと心から願うプロダクトである。

企業 私たちについて

私たちは、人間の鼻のように“におい”で排泄を検知できる製品、ヘルプバッドを開発しています。開発したきっかけは「おむつを開けずに中が見たい」という介護職員さんのひと言でした。

大学時代、実習で介護施設を訪れたときのことです。私はとんでもない光景に直面します。便座に座っている高齢の入居者さんを介護職員さんが二人がかりで押さえつけていました。入居者さんはうめき声をあげ、嫌がっても職員さんたちは力を緩める様子もなく、必死の形相でお腹を押しています。もうすぐ帰宅時間なので、施設にいるうちに排便させるために、腹圧をかけていると言います。
あまりにショッキングな光景でした。
私は思わず、「これはご本人が望んでいることですか?」と尋ねました。質問しながら泣いてしまっていたと思います。職員の方は私をとがめることも、慰めることもなく、ただ静かにこう答えました。

「わからない」

重たい葛藤を背負いながらケアの現場に立ち続ける介護職員の方々。できることがあるなら、少しでも力になりたい。そんな思いで「どんな製品があったらいいと思いますか?」と尋ねたとき、返ってきたのは「おむつを開けずに中が見たい」でした。

aba代表 宇井吉美